「いいから早く降りろ! てか外から入った服で寝転ぶな」
「あ、そういうもんか。ごめんね汚かったね」

 理由がわかれば、素直に従う。むくりと起き上がった莉依子は先に降りていく龍を上から見つめ、微笑んだ。

 本当、変わってないな。
 ちょっと口は悪いけど、女の子にはあまり強く出られないんだ。

「龍ちゃん、何してるの?」

 飛び降りたい衝動を抑えて、梯子を1段1段降りた莉依子は、リビングダイニングに置いてある机に何やら色々と取り出し始めた龍に話しかける。
 何やら文句を——おそらく「ちゃん」付けについてやめろと言いかけたのか、一瞬眉と唇の端を歪めたものの、諦めたようにため息をついてから答えた。

「課題に決まってんだろ」
「かだい……ってお勉強だよね? 大学ってそんなに忙しいの? っていうか今は夏休みじゃないの? 大学生は夏休みが高校より長いってお母さんも言ってたよ」
「あのなあ」

 呆れた声を出す龍の隣に、莉依子は構わず腰を下ろしながら、教材と思われるそれらを手に取り紙をぺらぺらとめくっていく。
 正直なところ、何やらさっぱりわからない。