「何これ何これ」

 言いながら梯子へと手をかけ、「ちょっ、そこは待て」と何やら焦って止めようとする龍を尻目に、一気に駆け上がる。

「……おふとん?」

 そこにあったのは、シングルサイズのベッドスペース。
 程よく狭くて寝心地の良さそうな、何よりも龍の寝ているベッド。

「わー! おふとんだー!」

 そのまま、ぼすんと思いきり飛び込んだ。

「待て待て待て待てお前!」

 慌てて後に続いてきた龍は、すっかりベッドに寝転んでしまった莉依子を見て、頭を抱える。

「何してんだバカ」
「えへへへー寝てるー」
「見りゃわかる」

 梯子に掴まったまま、ベッドの莉依子を見つめて困ったような怒ったような複雑な表情を浮かべ、はあ、とひときわ大きなため息をついた。
 対して莉依子は、この上ない至福の時を感じている。

「ねえ龍ちゃーん」
「何だよ、つーかだからいい加減龍ちゃんはやめ」
「ここ、懐かしくて落ち着くねー。龍のにおいがいっぱいする」
「ばっ……」

 一気に首まで赤く染めあがった龍は、口を右手で抑え莉依子から視線を逸らした。
 ほう、これも新鮮な反応だ。
 莉依子に、小さな悪戯心がまた芽生えにやりとしてしまう。
 龍は赤くなりながらも怒ることを止めない。