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「お邪魔しまーす」
借り手はほとんどひとり暮らしの学生だろうと思われる、コンクリートで出来た今時のアパート。
屋上があるようで、日中に向かえば昼寝が楽しめそうだ。
そう言ったら「焦げ死ぬぞ」としかめっ面で返された。
角部屋——306号室の扉を開けた部屋の主の背を押しのけるように、莉依子は玄関へと滑り込んだ。
申し訳程度の廊下を通り過ぎ、更に扉を開けると、リビングダイニングが一緒になったワンルームがそこにある。
「わあ綺麗! え、意外!」
「おいコラ靴! 脱げよ」
「あっごめん、おじゃまします!」
「……靴くらい揃えろよお前……」
背後で小言が聞こえるけど、気にしてはいられない。
龍の部屋に入るのは、家を出て以来なんだから。
莉依子は抑えきれない興奮で突っ走っていた。
「うん、これだよこれ!」
はしゃぎながら、部屋の中をぐるぐる回る。
もうため息以上のものは出ないかのようにぐったりと後ろから着いてきた龍は、ここまで来る途中で持ってくれていた莉依子の荷物を部屋の隅に下ろした。
「ん? なーに、これ」
部屋に入って、まず最初に飛び込んできた南側の窓にはりついていた莉依子は、龍へと向き直った時にあるものを見つけた。
キッチンとリビングダイニングの間に、真っ白な梯子。