ああ忘れてた、と莉依子は呟いて、人差し指を立て龍へと続ける。

「彼女がいるなら、妹ってことにしといて。それならめんどくさくないでしょ」
「いねーから小細工はいらねえ」
「いないの?」
「うっせぇな傷を抉るな。ただでさえ昨日から落ちてんだよこっちは。……で? なんでこんなとこまで来たんだよ? 肝心の質問に答えてねーんだけど」
「え?」

 目を見開くのは、莉依子の番だった。龍を見つめ返す。
 眉間に皺を寄せたまま、莉依子を見つめている龍の顔にはクエスチョンマークが書いてあった。

 何を言っているんだろう。
 ここまで会いに来たことだけが、理由を如実に表しているというのに。

「会いに来たんだよ、龍ちゃんに」

 とても単純で、ひどく切実だ。