ある程度の年になってからの男ってのは多分、親に関する話はある意味タブーだ。下手に話すとマザコンだの甘えん坊だのからかいの元になる。
 小学校高学年の頃、お約束のようにうっかり担任を『お母さん』と呼んだ同級生は、未だに同窓会でネタにされる。
 来年に控えている成人式でも絶対ネタにされるだろう。

 だからわざわざ話題に上げたりしない。そういうもんだ。
 なのにいきなり『親がうざいって反応が普通だよな』みたいな確認をしたもんだから、ツルからしたら『なんだそれ?』って事になるんだろう。

 はー、仕方ない。
 俺より安達と仲のいいこいつなら原因がわかるかもしれないし。

 コン、とシャーペンの先でわざと音を立てた。
 ツルがそこに注目する。俺はルーズリーフに書き始めた。

『今朝安達とここに来る前に話してたんだけど』
『どーはん出勤?』
『アホか。きいてきたのおまえなのに邪魔すんな』
『はいはいどーぞ』
『とりあえず俺が怒らせたっぽい』

 書き終えてツルを見る。
 ツルは意外にも眉を顰めていた。じっとそこを見つめた後、俺の字のすぐ下に書き加える。

『何の話してたんだよ。さっきの流れだと親関係だろ』

 急に真面目なトーンになった気がして調子が狂う。
 でも訊きたいことがある俺は、気にせずに続けた。