夏休みに入る頃バイトをやめたツルは、わりと評判だったエセ爽やか髪を一新してパーマをかけた。
 本人には口が裂けても言わないけど、顔が派手だから全然負けていない。

 頬杖をついて未だ眠そうなツルは、あーあと気だるげに言った。

「資格とか俺なーんもねーからさー…何でもいいから取れって」
「言われたと。誰に?」
「……親」
「ダッセ」
「るっせーな、仕送りの危機だったんだよ」
「卑怯な手使ってきたなまた」
「だろ?」

 上京組にとって仕送りは死活問題だ。
 ちなみにツルと俺は偶然にも同じ、家賃分+2万の仕送り。
 大学内には仕送り月10万以上で足りないとかわけのわからない連中もいるけど、青畑を羨んでいたってしょうがない。
 うちはしがない一般家庭だ。無理なものは求めても仕方ない。だからバイトする。簡単な事だ。
 食費を抑えるために納豆と白米だけで過ごしたことだってある。

「なーツル」
「あ?」
「親からすんげー着歴残ってたらどう思う」
「うぜぇ」
「ですよね」
「なんだよ」
「や……」

 そうだよな。
 これが普通の反応だ。少なくとも俺らのなかではそうだ。