その誰かは投げ出すように机に鞄を置いた。
 ガシャンと派手な音がする。こいつは漫画やら髪を巻くナントカやら勉強道具以外をかなり持ち歩いていて、壊れやしないかと思う程それらを乱雑に扱う。

 そして俺の横に腰を下ろすとすぐに鞄に突っ伏した。
 来たばっかでもう寝るつもりか。

 まだ見慣れないパーマのかかった茶色い髪にブスブスとシャーペンを突っ込んでみても、動かない。

「よし、死んだか」
「生きてるわボケ」

 顔だけ俺へと向いてジト目で見てきたのは鶴来雪広(つるぎゆきひろ)。例のツルだ。
 大学に入ってから何となくつるむようになった。
 初めて名前を聞いた時『真っ白な奴だな』と言ったら『繊細で嫋(たお)やかなんだよ』と返してきたのを覚えている。
 当然繊細でもないし嫋やかでもない。むしろ逆だ。

「隣あいてますか座ってもよろしいでしょうかくらい聞けよツル」
「なにそれキモい」
「つーかお前がこれ取るの、意外過ぎ」
「あー……」

 盛りすぎの髪にシャーペンを刺し続けるのをやめない俺の手をバシッと叩くと、心底だるそうな顔をしてツルは起き上がった。