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大学敷地南端にある特別棟2階、A―5講義室。
この大学の中ではわりと広い教室だ。夏休みに開かれる特別講義にこれだけ人数が集まるのかは甚だ疑問だったけど、8割以上は埋まっている。
教育学部ではなくてもやっぱり皆考えは同じなのかもしれない。
全部で15列ある長机のうち、窓際の後ろから3列目に鞄を下ろして周囲を見回した。
探しているのはひとりだ。
……いた。安達だ。
前から2列目、中央に座っている。
アリーナクラスもいいところだ。どれだけ真面目なんだよ。
窓側にいる俺からは斜め横顔が見える。
真剣な顔をしてテキストを開いて、講師が来るのを待っているらしい。
知り合いがいないっぽいことをさっき言っていたから講義に集中することを選んだのか。
安達は左手で頬杖を突き、右手でパラパラとテキストをめくっている。
顔は当然ながら見えない。
「……なんで怒らせたんだ?」
じっと見つめながらため息を吐くと、隣に誰かが近付いて来た。
顔を見なくたってわかる。