「なに? どうしたの?」

 さすがの安達も、不思議そうに訊ねてきた。

「や、まあ、……大したことないけど着歴にビビッて」
「イタズラ電話?」
「いや」
「ならそんなにビビらなくてもいいのに」
「……母親からなんだけど」
「お母さん? 久住くんの?」

 そう、と答えると俺は他のメールとラインを確認して手早く返信を済ませ、またスマホを鞄に突っ込んだ。勿論母親からのメールはまだ未読だし、電話を折り返すこともない。

 安達は、慌てたように俺へ近づいた。
 少しだけ離れてた距離がなくなって、ドキッとした。でも安達の表情はひどく真剣だ。

「いいの?」
「……何が」
「電話。お母さんに折り返さないと。いっぱい履歴にあったんでしょ?」
「あー、いいいい」
「なんで?」
「なんでって……別に」
「大事な用があったのかもしれないよ」

 どうして安達がこんなに食い下がってくるのかがわからない。
 ここまで言われると逆に意地になるというか、素直に掛けなおそうと思えなくなる。元々掛けなおす気もなかったけど。