「龍! 落としてる!」
「あーーーーーーー!」

 ぐりんと向きを変え、耳が痛くなるくらいの大声をあげてお母さんの元へ走っていく。

 この男の子は、本当に元気がいい。
 本当は泣き虫なところが可愛いけれど、それを誰にも見せまいとするところはかっこいい。

 おふとんの中でこっそり私にだけ見せる、あの大きな目からぽろぽろと落ちるしょっぱい水の事は、ふたりだけの―――ひとりといっぴきだけの、内緒。

 お母さんの手から、ブンと思いきり引っ張るようにふたつの何かを受けとったと思えば、そのまま彼女と何やら話をしている。
 そしてすぐにまた、私へと向き直った。

 短い腕をめいいっぱい振って、足を頑張って動かして、汗びっしょりになりながら私へと走ってくる。

 彼の目はいつだってきらきらしていて、私は見るのが大好きだ。
 あったかいお日さまみたいだとも思うし、真っ黒な空にチラチラと光って見えるお星さまのようだとも思う。

「ただいま、りいこ! ほら! ねえみて、りいこ!」

 一度私の鼻と彼の鼻がくっつくくらいに近づいてから、今度は持って帰ってきた何かを私の目の前に突き付けた。