「でもツルの話すると安達照れるから、俺てっきり」
「照れるっていうか、……あーもう!」

 安達は無理矢理俺の手を両手で包み込むと、真っ赤な顔で睨みあげてくる。
 可愛すぎて、どうしたらいいのかわからない。

「ツルには全部が全部バレてるから、久住くんと一緒に居るとことか見られるのすっっっごい嫌なの! あとでさんっざんからかわれるから!!」
「………はい?」
「わかんないならもういい知らない」

 包まれていた温もりは離され、安達はまたさっきと同じ体勢に戻り空を仰いでしまった。
 最後まで言わせるなと言わんばかりの顔で必死になる安達は、俺の知らない安達だ。

 いつもはもっと穏やかで、にこにこと笑っていて、感情的になることがあったとしても、朗らかに笑っていて。

 初めて見る姿を目の前にして、俺は不思議なくらい頭が冴えわたっていくのを感じた。

 つまりは、そういう意味。
 俺が安達に対するものと同じ気持ちを、安達もきっと俺に対して。 

 心なしか頬を膨らませた安達に倣って、俺もまた空を仰ぐ。
 そろそろと辿りついた指先を、今度こそきちんと絡ませた。

 一瞬だけびくりと動いた俺より小さくて細い指は、遠慮がちに絡み返してくれた。