「まずさ。なんで安達が謝んの」
「え? だって私完全に八つ当たりだったから、この前の。久住くんは全然悪くないのに」
「でもそれは俺が無神経なこと言ったからだろ?」
「え?」
「あ」

 不思議そうな顔の安達を見て、気が付いた。

 安達が親を亡くしたって話は、俺が勝手にツルから聞き出したことだ。
 下手したら安達のツルへの信頼度が変わってしまう。いくらツルでも、俺のせいで友達に失望されたら気の毒だ。

 どう誤魔化そうか答えあぐねていると、安達は柔らかく笑った。

「もしかして、ツルから聞いたの?」

 ……女の子って、みんな第六感が発達してるんだろうか。
 母親もやけにカンが鋭い。何も言わなくても表情か何かから感情を察知する能力が………いや、母親と安達を一緒にしちゃいけない。
 いけないけど、性別は同じだ。性別だけは。

「あ、いや……」
「あははは。誤魔化すの下手だねえ久住くんは」
「で、でもツルから進んで話したわけじゃないから、安達怒らせたのなんでだ? ってわかんなかった俺にツルは親切心で」
「あはは、ちゃんとフォローしてる。仲良いもんね」
「まさか」
「でもいいよ別に、隠すことでもないし」

 安達は、膝を抱えていた両手を後ろの草地へ下ろした。
 胸を張って前を真っ直ぐ向く横顔がどこか清々して見えたのは、気のせいじゃないかもしれない。