―――オラ次!
 ―――キィィィィン
 ―――おっせーぞ何やってんだ!
 ―――ジィワジィワジィワジィワ

 野球部の掛け声と、ノックの音。
 そして蝉の声だけが聴こえる。

 俺も安達も話しだすタイミングを掴めないまま、同じように膝を抱えてグラウンドを見つめていた。

「……ごめんね」

 小さく切り出したのは、安達だった。
 男なら先に行くべきだと思っていたのに情けない、というか、どうして安達が謝ったのかが全くわからない俺は隣を見て更に驚く。
 いつの間にか立ち上がって、俺にきっちりと頭を下げていたのだ。

「や、え!? いや座っていいから、てかマジで座っていいから」
「本当にごめんね」
「うんわかった、とりあえず座ろ」
「……うん」

 大人しく座る安達に改めて訊ねる。
 だって、謝らなきゃいけないのは俺のはずだ。
 俺が無神経なことを言ったから。