「いい風だなー」
俺が言おうとした言葉は、ツルから放たれる。
振り返ると、目を伏せて本当に風を感じているようだった。正直なところ、絶対に俺を見て不敵に笑っていると思ったのに。
思わず凝視してしまっていたらしい。ツルはそのままブハッと吐き出すと盛大に笑い出した。
「さすがに久住に見つめられたところでキモいとしか言えねー」
ツルは我慢できないと言ったようにそのままくの字に曲げて身体を震わせて、堪えるつもりもない笑い声が俺の耳に入ってくる。
笑っているのに、いつもみたいにしつこく理由を聞いてこない。
いつも通りに話を振りながらも、ツルはツルなりに何かを察してくれているのかもしれない。
「同じくキモいな」
でもそんな事言ったってキモいだけだから、俺もいつものように冷めた声で返す。
俺は窓の外へ視線を戻した。
確かに今日の俺はおかしい。おかしいとするなら、莉依子が現れたあの日からおかしいのかもしれない。全てを夏の幻だと思いたい。
反論するつもりもないけれど、説明出来る気もないからそれ以上何も言えず、口を噤んだ。
俺が言おうとした言葉は、ツルから放たれる。
振り返ると、目を伏せて本当に風を感じているようだった。正直なところ、絶対に俺を見て不敵に笑っていると思ったのに。
思わず凝視してしまっていたらしい。ツルはそのままブハッと吐き出すと盛大に笑い出した。
「さすがに久住に見つめられたところでキモいとしか言えねー」
ツルは我慢できないと言ったようにそのままくの字に曲げて身体を震わせて、堪えるつもりもない笑い声が俺の耳に入ってくる。
笑っているのに、いつもみたいにしつこく理由を聞いてこない。
いつも通りに話を振りながらも、ツルはツルなりに何かを察してくれているのかもしれない。
「同じくキモいな」
でもそんな事言ったってキモいだけだから、俺もいつものように冷めた声で返す。
俺は窓の外へ視線を戻した。
確かに今日の俺はおかしい。おかしいとするなら、莉依子が現れたあの日からおかしいのかもしれない。全てを夏の幻だと思いたい。
反論するつもりもないけれど、説明出来る気もないからそれ以上何も言えず、口を噤んだ。