「……何かあったんだろ。久住」
「え?」
「まぶた腫れてる。……眼鏡で隠してるつもりかもしんないけど」

 しまったと思うと同時に、少しの沈黙。
 またうまくかわせなかった。
 俺の顔を見た直後にツルが見せた、固まった上の変な顔の原因って、もしかしなくてもそれか。

 普段は―――板書のためか、勉強するときテキストが見づらい時にしか使用しない眼鏡を掛けたことで、かえって目をひいたのかもしれない。

 大学受験の前に、願掛け代わりに買った眼鏡。
 何となくゲン担ぎというか、自分にとって縁起がいい気がしてずっと使っている。

 これもよく莉依子がイタズラしようとしていたのを止めていたなと、何から何まで想い出を連れてくる眼鏡の縁を撫でてから目に触れる。
 瞼にも触れてみた。そこまで目立つように腫れている感覚はない。

「……目立つか?」
「そこまでは目立たないけど、やっぱちょっと違う」
「ツルは細かい変化に敏感でキモい」
「女の子にはウケいいよ? 髪切ったとか香水変えたとかすぐわかるから」
「男の変化に気付く必要ゼロだろ」
「性分なんだよ」

 それで?
 と俺の話を促すように、ツルはニヤリと笑った。
 視線もばっちり合ったけれどあえて気付かないふりをして、俺はまた窓の外を見た。