「あの子お前んとこ泊まってたんだろ? やばくなかったわけ?」
「は?」
「未成年に手出したら犯ざ」
「出してねーし何なんだよお前は」

 力説するツルの頭に心もち強めの右手チョップをかますと、ツルは大げさにベッドへ倒れ込んだ。
 
 ツルが沈み込んだ弾みでベッドが跳ねて、俺の身体も揺れる。
 仰向けで倒れたままのツルは、そのままぼんやりと天井を見ていた。
 俺も、何となしにまた窓の外へと目を向ける。外を学生たちが通り過ぎる。カーテンが揺れる。風がまた頬を撫でる。今度はさっきよりも少し冷えた風だった。

 あの日、この景色を莉依子はどんな気持ちで見ていたんだろう。

「……なー久住」
「またふざけた事いったらここから追い出すからな」
「保健室の先生じゃねーからそんな権限ないだろ」
「ないけど追い出す」
「殺生な」
「うるさい。……で、何」

 ツルを見ると、両腕で顔を隠すようにクロスしていた。
 また長いため息を吐いて、さっきまでのテンションとは全然違う静かな声が落とされる。