――チリン

 また聴こえた。

「……莉依子? いるのか?」

 濡れた瞳を腕で乱暴に拭いて立ち上がり、俺は部屋の中央で周囲を見回す。
 ふと見上げた、その先。

 初日には勝手に上って勝手に寝転んでいた。
 そこで寝るように言ったのに、俺の布団に潜り込んできた。
 俺のにおいがするなんて臆面もなく言った莉依子を、俺は怒った。

 そしてつい数時間前まで、莉依子がいたはずの場所に。

 真紅の首輪をした、見慣れた猫がそこに居た。

 ――チリン

 俺が小学生の頃になけなしの小遣いで買った小さな小さな金色の鈴を揺らして、確かによく知る猫が居た。

 耳と耳の間の3本筋。
 足先だけ靴下をはいたように白い毛が混じって――――