『血が繋がってるからって、家族っていうのがみんながみんな良いものじゃないことも、私知ってる』

 聞いたばかりの莉依子の言葉が、頭を過ぎった。

人によっては、動物と人間を一緒にするなと言うかもしれない。
 でも、俺はそうは思わない。
 そしてきっと、莉依子には自分を産んだ母に棄てられたことが傷として残っていた。だけど、俺の母親をはじめとした飼い主を——俺たちを新しい家族と考え、莉依子なりに幸せを感じてくれていたのだろう。

 大学に連れて行った時の事を思い出す。

『りいこちゃんにとって、久住ってなんなの?』
『大事な家族です』

 何を期待したのかはわからないツルの質問に、莉依子は照れひとつなく即答していた。

『お母さんもお父さんも大好き』

 昨夜もそう言っていた。あの時の俺は何もわかってなかったから、莉依子は隣の家に住む幼馴染だと思っていたから、『それは俺の親だ』なんて言ったけど、あれは正しかったんだ。

 そして最期に、俺に会いに来てくれた。

 気付けば頬が濡れている。
 とめどなく溢れては流れている液体の存在にはとっくに気付いていたけど、もう気にしてなんていられない。