でも元々受けようとしていた講座だから、別に追いかけてきたわけじゃないし、後ろめたい事は何もない。
 何もないけど、言い訳めいたようになってしまうのは、少なからず下心があるからだ。
 ない方がおかしいだろ。

 脈はないとわかっているのに、消せない下心。男の哀しい性だ。
 おかしな独り言を発してやしないかとハラハラしながらも、安達を見ているだけで芯から癒されていくようだ。
 安達は癒し系ってやつなのかもしれない。

「まあ安達は似合うかもしれないな。でもなんで取ろうと? せっかくの夏休みなのに」
「似合うかどうかはわかんないけどねえ。んー……取れるもんなら取っておこうと思って。手に職っていうか? 受かんなきゃ意味ないけど。夏休みは関係なくない?」
「まーそれもそうか。でも安達はアイツ目当てだろ?」
「ちょ、ホントやめてよそれ違うから」

 思いきり肩を叩かれたけど痛いのはむしろ心だったりする。

 俺の言ったアイツというのはつまり、安達と共通の友達だ。そもそも安達と知りあわせてくれた、俺のツレである鶴来(つるぎ)。愛称はツル。
 なぜかいつも、安達は俺とふたりになる機会があると、ツルに見られないか気にしているのだ。
 そんな風にされたら、俺だってピンとくる。 

「ホントに違うからね?」

 必死に違うと言い張る安達の睨みも、俺の身長差ではただの上目遣いにしかならない。
 だから嬉しい。
 そんな自分が悲しいと思った。