「むなしくねぇし……って、え、あ?」
いつの間にか俺の左隣に立ち、じっと見上げてくる顔がある。
急に目を開けたことで、ぼんわりとしていた視線のピントが合っていく。
左耳の下にシュシュが見えた。
大学に入学した頃はショートボブだったからようやく髪を縛れるまで伸びてくれたと、そんな話を聞いたことが頭に浮かんだ。
だけど、まだそこまで長くないからか、落ちてきてしまうらしい右側の髪をピンでまとめている。
そして俺の目をじっと、本当にじいっと見てくるその子は―――
「ああああ安達!?」
「えっとごめん、なんか邪魔したっぽいね?」
「や! ぜんっぜん大丈夫! あちーなって思ってたとこ」
「だよねぇ。空調効いてるはずなのにね」
垂れ目がちな安達が少し困ったように眉に皺を寄せるだけで、どうしようもなく可愛く見えた。
同級生の安達。
下の名前は確か、ともえ。
彼女の友達がそう呼びかけていたのをきいたことがあるだけで、どんな漢字を当てはめるのさえ知らない。
2年になってからツレを通じて知り合ったばかりの、俺が『彼女になってくれたら嬉しいナンバーワン女子』だ。
「久住くんも取ってるんだっけ? 今日の講義」
「もしかして安達も?」
「うん」
もしかして、なんて言ったけれど実は知っている。
いつの間にか俺の左隣に立ち、じっと見上げてくる顔がある。
急に目を開けたことで、ぼんわりとしていた視線のピントが合っていく。
左耳の下にシュシュが見えた。
大学に入学した頃はショートボブだったからようやく髪を縛れるまで伸びてくれたと、そんな話を聞いたことが頭に浮かんだ。
だけど、まだそこまで長くないからか、落ちてきてしまうらしい右側の髪をピンでまとめている。
そして俺の目をじっと、本当にじいっと見てくるその子は―――
「ああああ安達!?」
「えっとごめん、なんか邪魔したっぽいね?」
「や! ぜんっぜん大丈夫! あちーなって思ってたとこ」
「だよねぇ。空調効いてるはずなのにね」
垂れ目がちな安達が少し困ったように眉に皺を寄せるだけで、どうしようもなく可愛く見えた。
同級生の安達。
下の名前は確か、ともえ。
彼女の友達がそう呼びかけていたのをきいたことがあるだけで、どんな漢字を当てはめるのさえ知らない。
2年になってからツレを通じて知り合ったばかりの、俺が『彼女になってくれたら嬉しいナンバーワン女子』だ。
「久住くんも取ってるんだっけ? 今日の講義」
「もしかして安達も?」
「うん」
もしかして、なんて言ったけれど実は知っている。