・・・・・

 夏の陽射しは、殺人級に暑い。
 俺がここに住む決め手となったともいえる、ロフト空間は特に陽差しをモロに浴びるものだった。

 でも、置いたベッドに寝転がるとちょうど頭上に小さな窓が開いていて、夜の間はたとえそれが熱風であろうと微かな涼を送り込んでくれる。
 時折、騒音や近所の住人達の騒ぎ声という要らないオプションもついてくるけれど。

 微々たるものだとしても小さな幸福を運んできてくれるはずのそれが、今は「起きろ」と暴力的に叫んでいる気さえした。

「……んだこれ……クソあっちい……」

 胸元を掴んで、Tシャツの内部に空気を送りながら起き上がると、ベッドの上で胡坐をかく。

 頭から首筋、胸元へと汗が流れ落ちていって気持ちが悪い。そろそろエアコンを稼働させないと、節約の前に脱水しそうだ。
 いくら金がないと言っても、我慢には限界ってもんがある。倒れて入院にでもなったらそれこそ金がかかるだろう。
 節約したいのも本音だけど、1日くらいエアコンつけてやればよかったなと思う。

「俺先下りるわ。お前も……」

 隣にいるそいつに話しかけながら、俺は自分の右側のシーツを撫でた。

「……は?」

 そこにあったはずのぬくもりが消えている。
 しわくちゃになったそこは、残像のようにヒトの形によれていた。