「な、なんだよ」
「龍ちゃん、お願いがあるの」
「龍ちゃんはやめろ」
「そろそろしつこいよ」
「お前が言うな!」
「ごめん怒んないで。お願い聞いてほしいの」
「……何だよ」

 嫌な予感でもしているのか、龍の表情は頑なで目元は訝しげにこちらを見つめ続けている。本能というものなのか、龍の勘の良さにはほとほと感心する。
 面白いほどの視線を感じながら、莉依子は息と一緒に吐き出した。

「今日の夜一緒に寝てほしい」
「……はあ?」

 テンポが遅れて、龍は心底呆れたように大声を上げると、『これまでで1番盛大なため息』が更新される。
 髪をぐしゃぐしゃと掻きまわし、勘弁してくれと言わんばかりに

「だからー、そういうのはダメなんだって。つーかこないだも勝手に潜り込んできたろ」
「お願い。泊まるのだって今日で最後じゃん。ね? これで最後なんだから。ちっちゃい頃みたいに一緒に寝ようよ」
「もうガキじゃねーだろ」
「さっきガキだって言ったじゃん」
「それとこれとは……」
「お願い!」

 両手を合わせ、莉依子は神様に願ったように龍へと祈った。