「……龍ちゃん」

 声をかけてみるけれど、反応がない。

「りゅーう?」

 莉依子はソファの傍にひざまずいて、もう1度呼んでみる。やはり反応はない。
 こうして眠っている姿は、幼い頃とあまり変わらないようにも見える。ついこの間夢で見た龍と、今の龍を重ねて見つめてみた。

 頬に落ちる睫毛の影。少しだけ開いた薄めの唇は何ら変わらない。
 定番のコーディネイトと、毎晩同じようなTシャツにハーフパンツ。
 ……これは3日間で察したけれど、洗濯したものを畳んで棚にしまう事を龍は苦手としているようだ。
 重ねて置いては上から取っていくおかげで、毎回同じようになっている。 

 そして、シャワーの後にわかりやすくなる、くせっ毛。
 相変わらず隠れた努力家なところ。

 変わっていないところはたくさん見つけられたけれど、やはり目の前に居る龍は『20歳の龍』だ。
 莉依子が自分の目で最後に見たのは、18歳の龍だった。
 たった2年。だけど莉依子にとっては長い長い2年。

「なによ。大人になっちゃってさ」

 莉依子はソファの背もたれに手をかけ、頬を膨らませながら身を屈めてみた。
 目を伏せて小さな呼吸音を繰り返す龍の唇がすぐそばにある。