お酒というものを一緒に楽しんでみたかった莉依子は、諦められずに「私も飲みたい」と手を伸ばしては缶を奪い取ってみた。
 しかしその度に缶のプルタブに指を掛ける前には、「お前にゃまだ早い」と取り上げられてしまったのだ。

 成人式でお父さんが龍と一緒にお酒飲むのを楽しみにしている事を知っているけれど、きっと、お父さんなら莉依子が先に一緒に飲んでも許してくれると思った。
 お父さんは、莉依子に甘いから。
 これは、莉依子のお父さんに対する『甘え』なのかもしれない。

 結局、少しくらいいじゃんとどれだけ拗ねて見せても「居候させてる責任だってあるんだからな。おばさんに会わす顔なくなるだろ」と繰り返し、莉依子が手にしたものだけではなく、冷蔵庫にあったアルコール類は全て龍が飲み干してしまった。
 なくしてしまえば飲まれる危険性はないと、それだけの話だ。

 龍が真面目で嬉しいけど、ちょっとつまらなかったのも本当。

「……龍ちゃん?」

 しかもどうやらそのまま寝てしまったらしい。莉依子が浴室から出てきた事にも近づいている事にも気付かず、ソファに横になった龍は目を瞑っている。