「ちょ! お前! なんでそれ持ってきた!」
「え? 飲もうよ。これお酒でしょ? アルコールって書いてあるし」
「いやいやおかしいだろ、ごめんねで酒持ってくんのおかしすぎだろ」
「だって、お酒飲んでる龍ちゃん見てみたいし」
「年末には実家帰ってやるから」
「今日じゃなきゃ意味ないの」

 今日が最後だし、というひと言は龍には聞こえないよう莉依子は呟いた。
 龍は天井を仰ぐ。

「話が通じない」
「お願い、飲もう?」
「いやだからお前」
「あ、じゃあ私も飲んでいい? ひとりが嫌なら私も」
「ダメに決まってんだろアホが」

 莉依子の手にあるビール缶を奪おうと立ち上がった龍は、先程まで頭を悩ませていた『何か』のことをすっかり忘れていた。