意識して口角を上げ、笑顔を用意する。

「こら。りゅーうーちゃん! 聞いてる?」

 ぺしり。

 大きな音を立てて、莉依子が龍の頬を両手で挟んだ。
 小さく、けれど確実に生まれた何らかの疑問について考え込んでいたらしい龍は、字の如く唖然として莉依子の顔を見る。むにぃと外側へ引っ張られた龍の顔は、アイロンをかけたようにつっぱっている。

「………りひこだ」
「だから、さっきから莉依子だよって答えてるよ」
「いへぇからはなへ」
「あははー、すごい変なお顔。さっきブッサイクって言ったお返しね」
「い、いへぇっつの」
「女の子にブサイクって言った事に対しての、ごめんなさいは?」
「あほなあ」
「……ま、いっけど! 私こそいっぱいゴチャゴチャ言ってごめんね!」

 莉依子は一気に言い切ると、龍の顔から手を離して立ち上がった。
 そのまま、すたすたと冷蔵庫へと向かって歩いていく。
 呆気にとられたままの龍は、莉依子が何をしようとしているのか全くわからなかった。ガタ、というのは冷蔵庫が開く音だ。

 しばらくして戻ってきた莉依子が、両手に持っていたものは――