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「………あ?」

 目の前に広げられた自分の手を見て、我に返った。
 ジワジワジワジワと響く蝉の声――に重なるように鳴り響いているのは、アラームだ。テーブルの上に置きっぱなしにしてある、スマートフォンの。
 まるで俺に刺しこむが如く、遠慮のない陽の光は既に朝のそれではなく……

 蝉の声? アラーム?
 なんでこんなに暑いんだ?

 違う汗が額から流れた。

「……ああああ!!」

 叫びながら腹にかかっていたバスタオルを蹴飛ばして、梯子に手を掛ける。1段ずつ降りるのが面倒になり途中で飛び降りるのも、まぁ常だ。
 テーブルに置かれたスマホのロックを解いて、アラームを解除する。メッセージが何件か来ているのを視界の端で捉えつつも、シャワーへと急いだ。
 
 なんてったって、Tシャツがぺったりと肌に張りついてて気持ち悪い。
 そしてアレがアレすぎる。鏡を見なくてもわかってる。長年の付き合いだからわかっている。
 こんな状態で大学なんて行けるか。

 行水もいいところでシャワーを終えると、ドライヤーで髪を整える。
 取り込んだばかりで畳んでもいない洋服を何点か手にすると、頭からかぶって歩きながらデニムに履き替え、大して入替えをしない鞄をひっつかんで部屋を後にした。