時間はあっという間に過ぎてしまった。お姉さんと手をつないでいたのは、ほんの数分だったかな。

「ここが私の行きつけよ」

 そう言うとお姉さんの手がするりと僕の手を離れた。お姉さんはビニルの垂れ幕をめくって店の奥へと入っていく。

「おっさん、邪魔するよー」

 お姉さんが野太い声を出すと、男の人の寝ぼけた声がした。人が来ないのをいいことに店を開けたまま眠っていたらしい。垂れ幕をくぐり、店の中に入る。床がべたべたとしていて、僕のおんぼろの靴は、底が外れそうになる。

「なんだそのガキは?」

 カウンターの向こう側でふんぞり返っているおじさんが、声を投げてきた。そしてボクと目が合うなり、苦笑いをして今度はお姉さんに向かって小馬鹿にするような視線を向ける。

「おいおいおい。いくら年下が好みとはいえ、そいつは感心しねえな」
「違うわ、おっさん!」

 お姉さんは、おじさんとかなり仲がいいみたいだった。