もう帰ろうかな。そう思ったけれど、最後の最後にとトラックの下をのぞき込んっだとき、何やら光るものがあると気づいた。――何だろうと思うまでに、ボクはトラックの下に潜り込んだ。
 それは金属製の筒のようなものだった。匂いを嗅いでみる――鉄と火薬の匂いがした。お父さんの持ってるもので見たことある。きっと銃弾の一部だ。お土産に持って帰ろう。ボクはその戦利品を月明りにかざした。

「坊や、そこで何してるんだい?」

 と急に声をかけられたから、飛び跳ねて、慌ててそれを後ろ手で隠した。

「それ、薬莢(やっきょう)だろ? あたし、集めているんだ」

 お母さん以外の女の人に会うのは、ほとんど初めてだった。でも、お母さんとはまるで別の存在のようで。だって、お母さんよりもずっと背が高いし。唇には艶があって、吐息からは花のような甘い香りがした。
 女の人は、しゃがみこんでボクと目線を合わせた。
 そして、紅い爪の生えた細い指でボクの頬を撫でた。

「君みたいな、小さい子が真夜中うろついていると、あたしみたいな怖いお姉さんに見つかるぞっ」

 脅しているような言葉だったけど、そう言って笑う顔は、人懐っこかった。
 長い栗色の髪、ドレスの空いた胸元から見える白い肌。――胸がどくんと疼いて、息が苦しくなった。