狭い路地を出たところで、視界が開けた。夜空をいくつもの電線が切り分けている。それらがぼんやりとした光を放つ裸電球をぶら下げていて、吸い寄せられた蛾が集っている。建物は、ボクが住んでいるような地面から土をかぶって盛り上がっているだけのような低いものもあれば、出鱈目にトタンを張り付けて出来たうずたかいもの。ひび割れたコンクリートの塊のようなものまで。どれもが不格好で、どこか不気味だ。
街を行く人たちは、真夜中なだけあって少ない。誰もが下を見て、ポケットに手を突っ込んで歩いている。いかつい男の人が多い。のぞきこんだ路地裏では、不精ひげを生やした、すえた体臭を放つがりがりのおじさんが、身体をぷるぷると震わせながら鼻から白い粉を吸引していた。けほけほっとむせ返って、それからのけ反って倒れた。しばらくしてから声をあげて笑い始めた。――そして、目が合ってしまって、急いで逃げた。
駆け込んだ先は、コンクリートでできた八階建てぐらいのビルだった。
あのおじさん、目が左右で違う方向を向いていて、その目が真っ赤で……思い出しただけで背中をぞわぞわっと虫が這うような感触がした。恐ろしいものを見た。
荒い息を整えたところに、美味しそうな匂いが漂って来て、ボクのお腹をぐうと鳴る。道路に向かって覗き込むように顔を出すと、ここら辺は飲食店が多く並んでいる様子だった。いくつか開いているものもある。けれど、僕はお金を持ってないから、お店には入れない。
ビルの一階のガレージには、ガラスが割れたトラックが一台停められていた。荷台にはカバーが掛けられていて、その上からゴムひもがくくりつけられていて、その中身が何かは分からない。目を皿にして探し回るボクは、まるで盗人だ。タイヤによじ登って運転席を覗き込んだり、必死に荷台の布を引っぺがそうとしたり。
お腹が空きすぎて、お店を目にした途端に、金目の物――金目のものはないかと探してしまった。でも、何も見つかりそうもない。
街を行く人たちは、真夜中なだけあって少ない。誰もが下を見て、ポケットに手を突っ込んで歩いている。いかつい男の人が多い。のぞきこんだ路地裏では、不精ひげを生やした、すえた体臭を放つがりがりのおじさんが、身体をぷるぷると震わせながら鼻から白い粉を吸引していた。けほけほっとむせ返って、それからのけ反って倒れた。しばらくしてから声をあげて笑い始めた。――そして、目が合ってしまって、急いで逃げた。
駆け込んだ先は、コンクリートでできた八階建てぐらいのビルだった。
あのおじさん、目が左右で違う方向を向いていて、その目が真っ赤で……思い出しただけで背中をぞわぞわっと虫が這うような感触がした。恐ろしいものを見た。
荒い息を整えたところに、美味しそうな匂いが漂って来て、ボクのお腹をぐうと鳴る。道路に向かって覗き込むように顔を出すと、ここら辺は飲食店が多く並んでいる様子だった。いくつか開いているものもある。けれど、僕はお金を持ってないから、お店には入れない。
ビルの一階のガレージには、ガラスが割れたトラックが一台停められていた。荷台にはカバーが掛けられていて、その上からゴムひもがくくりつけられていて、その中身が何かは分からない。目を皿にして探し回るボクは、まるで盗人だ。タイヤによじ登って運転席を覗き込んだり、必死に荷台の布を引っぺがそうとしたり。
お腹が空きすぎて、お店を目にした途端に、金目の物――金目のものはないかと探してしまった。でも、何も見つかりそうもない。