「あら……、ずっと雨水がかかっていたのね。この家もいつ崩れるか分からないわね」

 壁に立てかけて置いてある木の板を、穴にかぶせて、その場しのぎををしようということになった。この手のことはよくあることで、家の壁には、お父さんが釘で板を打ち付けて補強した跡がいくつもある。
 お母さんは、大工仕事ができないから、とりあえずかぶせるだけだ。

「あの人、今度はいつ帰ってくるのかしら」

 寂しそうにぼそりと呟く。最後にお父さんに会ったのは、もう数週間も前かな。お父さんはお母さんと違って、ボクに外の世界をもっと見て欲しいと思ってる。だから、お父さんがいれば、ボクは外に連れ出してもらえる。お母さんはそれさえも気に入らないみたいだけど。

 お母さんと一緒に板を持ち上げる。結構な重さだ。
 二人でよたよたと歩きながら壁に開いた穴に板を立てかけた。家に入ってくる雨水を何とか防ぐことができたけれど、いくつか水たまりができたままだ。バケツですくって、家の外に水を出したけれどぬかるみは残ってしまった。ようやく作業が終わったころには、外は真っ暗っだった。