その薬莢には、荒れ狂う炎を身にまとった龍が描かれていた。――見たことがない柄だ。思わず、店の中の照明を反射させてくるくると回転させてみる。自分がさっき渡したものよりも、ずっとずっと輝いて見えた。

「そんなに気に入ったか。よかったよかった。そいつはお前のおやじには内緒だからね。お姉さんとの約束っ」

 約束、そんな大切な言葉を上の空で聞いていたボクは、ラーメンを持って来たおじさんの声にびっくりして、肩を跳ね上がらせた。
 ことり、と置かれた二杯のラーメン。つゆが透き通ったきつね色で、黄金色の面が沈んでいる。ネギが雑に散らしてあって、それだけだ。家でも似たようなものは食べたことがある。そのときは、ネギもなかったような。

 「いただきます」と呟いて一口。甘辛く香ばしいつゆを吸った麺がつるんっと口の中に入った。家で食べたものとそうそう変わらないはずなのに、とてつもなく美味しいものに思えた。きっとお姉さんと一緒にいたからだと思う。