大家さんが、何かを思い出したかのように、私の方を振り向いた。

「彼氏さん、車変えたの?」

「えっ?」

私は賢人の車を見た。

「前は、白い車だったと思うけど。」

大家さんの言葉に、胸騒ぎを覚える。

賢人の車は、真逆の黒だ。

「もしかしたら、事故に遭ったついでに、買い替えたのかも……」

私も大家さんに、誤魔化しながら答えた。

「そう……事故に遭った車なんて、縁起が悪くて、乗ってられないものね。」

「はい。」

そして今度こそ、大家さんと私は、挨拶を交わしそれぞれの道へ。


「珠姫。」

車の中から、賢人が呼んでいる。

「ごめん。」

私は謝りながら、賢人の車に乗り込んだ。

「近くのスーパーでいいよね。」

「うん。」

車はゆっくりと、走り出した。