「まあ!大丈夫だったの?」

「ええ……なんとか、松葉杖で歩けるようになって。退院もしましたし、もう大丈夫です。」

「そうだったの。ごめんなさいね、何も知らなくて。」

大家さんは、50代の世話好きそうな奥さん。

時々こうやって、借家を廻っているのだ。


「あら、噂の彼氏さん?」

大家さんが、私の後ろに立っている、賢人を見つけた。

「はい。」

私達は照れながら、顔を見合わせる。

「お話は聞いていましたけど、こうして顔を合わせるのは、初めてね。」

大家さんは、賢人にも気さくに、話しかける。

「はい。」

賢人は、頭だけを下げた。

「じゃあ、また。」

「また。」

私と大家さんも、互いに頭を下げて、すれ違った。

それを見計らって、賢人が塀の側に置いてある、車に乗り込もうとする。

「そう言えば……」