こういう時って、放っておいた方がいいのかな。

よく男の人って、欲情を抑えるのに、頭を冷やすって何かで読んだし。


私は自分の足を擦った。

婚約者に、そんな事をさせているなんて。

自分はなんて、見下げた女なんだろう。


「賢人。」

私が名前を呼ぶと、賢人は慌ててキッチンから、リビングへと戻ってきた。


「そうだ。今日の夕飯、何がいい?一緒に買い物行こうか。」

「うん……」

賢人と一緒に立ち上がって、松葉杖を持ち、斜め掛けのバッグを賢人に掛けてもらった時だ。

私は松葉杖を放し、賢人に抱きついた。

「珠姫?」

「私、あなたの婚約者、失格ね。」

「どうして?」

賢人は、私の顔を覗き込んだ。

「だって、あなたにいろんな我慢させてる。」

「我慢?どんな?」

「さっきみたいに、抱きたいのに抱けない。」