「そうだ、賢人。私さっき、廊下であなたのご両親に会ったわよ。」

「えっ!」

必要以上に驚く態度が、私をまた不安にさせた。

「……どうして、そんなに驚くの?私が、賢人のご両親に会ったって、何もおかしい事はないじゃない。」

「あっ、うん。」

何かを隠しているかのように、賢人は狼狽えながら、無意味にベッドの回りを、ウロウロしていた。

「何か、言ってた?」

「何かって?」

逆に質問して、賢人の出方を伺った。

「……入院費の事とか。」

「入院費?」

どこかで、拍子抜けした。

「あっ、ううん。何も言ってなかったけれど。」

「そっか。親父もお袋も、珠姫の入院費の事、気にしてたから。」