「嫌よ、良人。」

「珠姫……」

「あなたが一生歩けなくたって、私は良人に付いていくわ。それが一度、生涯を共にするって、約束した証よ。」

私は何か言おうとした良人に、抱きついた。

「良人。良人!」

「珠姫……」

「良人がいない時の記憶は、偽りの記憶よ。私と賢人は、夢を見ていたの。現実じゃない。」


そう。

あの別れたあの日。

賢人は、現実に戻らなければと、言った。

今なら分かる。

私達は、現実を見つめなければならない。


「本当に、そうか?」

良人は、耳元でそっと呟いた。

「本当に、夢で終わらせられるか?」

「ええ。」

私は、抱き締める力を強くした。


「分かった。」

良人はそう言って、私を同じように、力強く抱き締めてくれた。



これで、終わり。

夢は終わり。

私はこれからも、良人と一緒に、人生を歩む。



賢人に、別れを告げて。