「ようこそおいでになりました。
お待ち申し上げておりましたよ。
ソリス・レアード様。
アリシア・ノベルズ様ですね。」
城下町に入る大きな城門には左右に1人づつ、槍を携えた門兵が立ち、それよりも身なりのいい男がロール紙を伸ばして中の名前を確認している。
「は……。」
いぶかしげな顔をしたソリスが自分のフルネームを読み上げる男を一瞥(いちべつ)する。今通ったばかりの自分たちの名前を呼ぶ男。
(なんだ?)
全身を包む奇妙な気配に腰のロングソードに手を掛ける。
振り返ろうとするソリスに男が手を差し出し、城下町へと身を促した。
2人を乗せた馬車は城の跳ね橋を通り抜け、侍女の案内で大きな扉の衣装部屋へと通される。
「いつ見ても圧巻。」
バーンっとアリシアが観音開きの大きな扉を開けると、中は見渡す限りのドレス畑。
色別に分けられたカラフルな部屋は、普段充分にオシャレを楽しめない10代後半の彼女たちの心をしっかりと鷲掴む。
「凄っ。」
一瞬気後れしたソリスを他所に、鏡の前ではアリシアのファッションショーが始まっている。
濃紺に銀のグリッターを散りばめたシックなドレス。
榛色の髪に映える薄いピンクの花をあしらったドレス。
シルバーの大きなリボンを胸元に当てたフェミニンなドレス。
「その、濃紺のドレス……。」
なにかがソリスの中で引っかかっている。
解消できない突っかかりに、動きの止まったソリスの腕をアリシアが引いた。
「やっぱりこのドレスがいいわよね。
ソリスはあの辺りじゃない?
3番目のドレス。気にいると思うわよ。」
「って、なんでこんな所でご飯食べてるわけ?」
所狭しと料理の並ぶテーブルの1つに陣取って、2人はディナーに舌鼓。
中央では、楽団の生演奏に多くの男女がダンスを楽しんでいる。
アリシアが何枚目かのローストビーフを口に運んだところで、大きなざわめきが起きた。
「なんと美しい。」
「まるで精霊のようだ……。」
口々に褒める声に人垣が割れて、1人の女性が歩いてくる。
「うっわ。美人。」
ソリスの言葉に、アリシアは女性を見ようともせず、むしろソリスの陰に入る。
おそらくソリスより少し年下だろうと思われるその女性は、見事な金の髪に大きな青い宝石のついたペンダントをかけ、ペールブルーのドレスがよく似合っている。
にこり。
(笑っ……た。)
ペールブルーのドレスの姫は、ソリスとアリシアに向けて微笑み、ダンスフロアへ入って行った。
「あれ? アリシアは……王子にアピールしに……行かないの?
こんな……玉の輿チャンス、そうそうないわ……よ。」
自分のセリフに違和感を覚えるのか、ソリスの顔は不可解に溢れている。
(知ってる。この次に来る言葉は……。)
『しつこい。』
重なったソリスのセリフに、アリシアの顔がにこぉっと微笑んだ。
「わかった?」
頭上に鳴り響く鐘の音。
「プリンセスっ!」
中央のダンスフロアでは、急に走り出したペールブルーのドレスの姫を追って、王子がテラスへ飛び出して行った。
「12時の鐘が鳴り終わるわ。」
無感情なアリシアの声。
「何。これ?
どうなってるの?」
「後でね。」
お待ち申し上げておりましたよ。
ソリス・レアード様。
アリシア・ノベルズ様ですね。」
城下町に入る大きな城門には左右に1人づつ、槍を携えた門兵が立ち、それよりも身なりのいい男がロール紙を伸ばして中の名前を確認している。
「は……。」
いぶかしげな顔をしたソリスが自分のフルネームを読み上げる男を一瞥(いちべつ)する。今通ったばかりの自分たちの名前を呼ぶ男。
(なんだ?)
全身を包む奇妙な気配に腰のロングソードに手を掛ける。
振り返ろうとするソリスに男が手を差し出し、城下町へと身を促した。
2人を乗せた馬車は城の跳ね橋を通り抜け、侍女の案内で大きな扉の衣装部屋へと通される。
「いつ見ても圧巻。」
バーンっとアリシアが観音開きの大きな扉を開けると、中は見渡す限りのドレス畑。
色別に分けられたカラフルな部屋は、普段充分にオシャレを楽しめない10代後半の彼女たちの心をしっかりと鷲掴む。
「凄っ。」
一瞬気後れしたソリスを他所に、鏡の前ではアリシアのファッションショーが始まっている。
濃紺に銀のグリッターを散りばめたシックなドレス。
榛色の髪に映える薄いピンクの花をあしらったドレス。
シルバーの大きなリボンを胸元に当てたフェミニンなドレス。
「その、濃紺のドレス……。」
なにかがソリスの中で引っかかっている。
解消できない突っかかりに、動きの止まったソリスの腕をアリシアが引いた。
「やっぱりこのドレスがいいわよね。
ソリスはあの辺りじゃない?
3番目のドレス。気にいると思うわよ。」
「って、なんでこんな所でご飯食べてるわけ?」
所狭しと料理の並ぶテーブルの1つに陣取って、2人はディナーに舌鼓。
中央では、楽団の生演奏に多くの男女がダンスを楽しんでいる。
アリシアが何枚目かのローストビーフを口に運んだところで、大きなざわめきが起きた。
「なんと美しい。」
「まるで精霊のようだ……。」
口々に褒める声に人垣が割れて、1人の女性が歩いてくる。
「うっわ。美人。」
ソリスの言葉に、アリシアは女性を見ようともせず、むしろソリスの陰に入る。
おそらくソリスより少し年下だろうと思われるその女性は、見事な金の髪に大きな青い宝石のついたペンダントをかけ、ペールブルーのドレスがよく似合っている。
にこり。
(笑っ……た。)
ペールブルーのドレスの姫は、ソリスとアリシアに向けて微笑み、ダンスフロアへ入って行った。
「あれ? アリシアは……王子にアピールしに……行かないの?
こんな……玉の輿チャンス、そうそうないわ……よ。」
自分のセリフに違和感を覚えるのか、ソリスの顔は不可解に溢れている。
(知ってる。この次に来る言葉は……。)
『しつこい。』
重なったソリスのセリフに、アリシアの顔がにこぉっと微笑んだ。
「わかった?」
頭上に鳴り響く鐘の音。
「プリンセスっ!」
中央のダンスフロアでは、急に走り出したペールブルーのドレスの姫を追って、王子がテラスへ飛び出して行った。
「12時の鐘が鳴り終わるわ。」
無感情なアリシアの声。
「何。これ?
どうなってるの?」
「後でね。」