「今さ、」
「うん」
「おまえに振られたときのこと思い出した」
「えっ、なんで!」
確かにまったくそんな振りもなく思い出したとか言うから彼女はギョッと目を見開く。
「分からねー。幸せになりすぎんなよってことじゃね?」
彼女は言葉を探しているようだがうまく見つからないらしく、「え、あ、う……」という一文字しか出てこない。
俺が彼女に振られたことは事実。彼女が俺を振ったことも事実。
「あ、あのね、」
俺もどうフォローを入れるか考えていると、ぼそりと彼女が呟いた。
「どーでもいい男と付き合うほど、蘭様は安くないからね!!!!?」
「え、じゃあ俺のことどーでもいいって思ってないならどう思ってんの?」
「っ、」
またも赤面する彼女。可愛い。
こんな彼女のことも、こんなこと内心思っている俺のことも、熊沢やカケルは知らないだろうなあ。
あの2人はどっちも聡いからもしかしたら見透かしているかもしれないけれど。
「す、すき、です……」
いっつも天邪鬼なくせに、こういうときは素直に言葉をくれる彼女。
あー 俺近いうちに幸せ死ぬんじゃないかなって割と本気で思うくらい、
「抱いてやるよ、蘭」
俺は更に赤面した彼女に惚れているのだ。
【横澤俊平の思考回路】
(今はそれよりも課題終わらせるか)
(えっ、)
(え?)
え、その声は期待してたってこと?