「……何時だと思ってんだよ」
「……今日は金曜日だからいいの」
強張った声で立ち上がり、こちらへ近寄ってくる彼に投げ捨てるように告げる。
念のため、スカートの陰でチラリとスマホのロック画面を確認する。
今日は金曜日。現在時刻は22時。
明日の部活は午後練習だ。いつもは帰宅が遅かったり、出張が多い両親も金曜日だから、もうすでに帰宅しているかもしれない。帰ったら怒号が飛んでくるかもしれない。
それでも今の私の最優先事項は横澤と会うことだった。
横澤との関係は今の私に欠かせない存在なんだと、思い知る。
「翔は?送ってもらって帰ったんだろ?」
「バカ山は今頃美和と高笑いしてるわよ」
「はあ?」
「次、今度絶対バカ山に贅沢ミックスプレート奢ってもらうわよ!!横澤!!」
「はあ……、ぶっ、どういうことだよっ……ふはっ」
あ。少し笑った。
いつもの呆れた声。いつもの横澤の、声だ。