「ふふ。……遅くに引き留めてごめんね、聞いてくれてありがと!諦めないし!」
女の子のその言葉を最後に足音がこちらに近づいてくる。
「げっ」
遠い意識の中で広樹くんが横で濁った声を出したのが聞こえて、私も我に返ったときには遅かった。
「…………」
「…………」
「…………」
女の子のぱっちりとした二重が、私と広樹くんを捉えたのが分かった。
微妙な沈黙を破ったのは、彼女のほうで。
「広樹、なにしてるの……」
ぶっきらぼうな声は明らかに怒っている。
そりゃ告白シーン覗かれて愉快な思いをする人はいないだろう。
「その子は?誰?後輩?」
見たことがない私の顔を見て、広樹くんに問い詰める彼女。
「あ、ああ。なんか翔の連れらしくて……」
「福山の?」