何も知らなかったら調子に乗ったかもしれないが、ここに来る数十分前、後輩から聞いた噂が脳裏をよぎる。
“南高に好きな人がいる”
これのこと?いやいや、どこからそんな話が漏れるんだって。
ついでに昼間の“横澤がまだ蘭のこと好きだったらどうするの?”なんて美和ちゃんもフラッシュバックしてくるから頭の中がごちゃごちゃしてくる。
もう、今日は一体なんなんだ。
それでも福山の手前、つとめて“いつもの私”になる。
「えー 噂って美少女ってやつですかー???」
「おい調子乗んなゴリラ」
「バカ山黙って」
「え、あー そっか。南高だから噂知らないのか。そりゃそうか」
爽やかくんは1人で納得する。
早くその“噂”の正体を教えてくれ。
「ね、名前なんて言うの?」
爽やかくんが流れるように名前を尋ねてくるから、そのまま質問を受け取る。
「え、私ですか?小杉蘭ですけど」
「あー!やっぱり噂のラ、」
「ばっか!!!!!」