「小杉に指名されても嬉しくねぇよ……」

「美和じゃなくて悪かったね」

「うん、熊沢に指名されたほうが嬉しいわ」

「はああ?」

「んんん?」


自然と睨み合う格好になる。

そうだ、この福山翔という男は私の大親友・美和ちゃんの中学時代の元カレだったりする。



高校2年になった今は、お互いに良き友人として、たまに駅で会うと談笑する仲だ。


「おいカケルー 何やってんだー??」


福山との一触即発の雰囲気が、右側からかかった爽やかな声で崩れる。

それに反応して、私も福山もその方向へ同時に振り向く。いや私カケルじゃないけど。福山はカケルだから振り向いて当然だけど。条件反射ってやつだ。


中央高の制服を着た爽やかくんがこちらへやってくる。

福山と似たような形のバスケットのシューズケースを持っていることから、きっと彼の部活仲間。福山は中学から男子バスケ部だ。