遅れるわよ。

 そんな呼びかけが、遠くの方から女性の声で聞こえてきて目が覚めた。
 どうして目が覚めたのか。
 どうして死んでいないのか。
 疑問は山ほどあるけれど、まずはこの声だ。聞き覚えがない。

 上体を起こして頬を叩き、意識の覚醒を促すと同時に部屋の扉が勢いよく開かれて、そこから女性がこちらに向かって来た。

「ちょっと汐里、いつまで寝てるの。学校遅れるわよ…!」

 それだけ言って、女性はすぐに部屋を出ていく。
 そんなことを言われてもな。今起きたところで、あまり意識もはっきりして――学校、しおり?