ある日、親戚の方が来てくれましたよ、と看護師に通されて病室に入って来た黒いロングコートの老人が言った。

『人を救ってみないか?』と。

 疑問符を浮かべる琢磨に、それがどういうことかという説明は直ぐに為された。
 男は、死の寸前にいる者の短い命を使い、別の死にそうな人の命を繋ぎ、助けることを生業としていて、その助かる相手というのは、死の淵に触れている琢磨のような存在ではなく、近い将来で命の火が消える者のことを指している。
 原理は企業秘密だが、Aの命をBに繋げることで延命させるここが可能なのだそうだ。

 リスクはあるが、それはどんな形で現れるものか分からない。大抵は望ましくないものらしい。

 しかし。

 そんな、意味も分からず無茶苦茶もいいところな話に、琢磨はどうして頷けたのだろう。

 老人が、一番驚いていた。