大規模な事故に巻き込まれ、献身的な手術の末、あわや死というところの寸前で留まった日から数週間。
 入院中の仲村琢磨に、退院をしたら何がしたいだとか、夢はあるかとか、若くて美人の看護師はそんなことを聞いていた。
 しかし、自分のことは自分が一番よく分かっているもので、確かに心臓は辛うじて動いているけれど、それが果たして『生きている』のかどうか。

 答えはノーだ。

 この腕は、足は、もう二度と動きそうにない。
 近い将来、死んでしまうことだろうと、そう分かってしまうものなのだ。
 希望を与えているつもりであろう慰めの言葉は、それを覚悟している琢磨にとっては残酷な嘘でしかない。生きているんだから、命はあるんだから。そんなものはまやかしだ。

 しかし、受け入れながらも、心残りなら一つだけあった。



 茜、一人で大丈夫なのだろうか。