「曲者め!! 斬り捨ててくれるわ!!」

 腰に下げていた得物を手にしたかと思うと、垂直に立て、顔の横で構える。八相の構えだ。剣道をしていたことがあるから分かる。

 あまりに突拍子もない行動に、どのように反応していいのか分からない。

「そこ……ボクの家なんだ。中に入りたいんだけど」

 それでも辛うじて口を開くことができた。

「ここはお主の家か?」
「……まぁ、そうかな」

 正確には父親名義の一軒家だ。築15年。4LDK。まだ辛うじて真新しさを残しているが、デザインなんかを考えれば、最新の一戸建てとはやはり違う。