お父さんと呼ばれ、健吾の顔が少しほころんだような気がした。しかし、その顔を見せたのもほんの一瞬で、ただ一言、いらっしゃいとだけ言って、背中を向け、リビングへ戻ってしまった。

 研究職に就いている父親は、分かりやすくシャイなのだ。愛想をふりまくのなんて到底無理。

 健吾が奥に引っ込んでしまうと、晶子の目が今度はボクの方を向いた。

「綺麗な顔してるね。うちの事務所入らない?」

 突然のスカウトにボクは分かりやすく狼狽した。