「ん? まぁ……そうだな」

 あまりにあっさり白状し、拍子抜けしてしまった。ノリコさんはあれだけ必死に麻美との約束を守ろうとしたのに、この男と来たら……。

 小さい頃、健吾にお前は知らなくていいと言われ、ノリコさんにも否定されてから、ずっと健吾の前で母親のことは口にしてこなかった。

 それ相応の時間が過ぎ、健吾の中では、案外、約束の有効期限が切れてしまっているのかもしれない。

 素直に白状したからといって、はいそうですかとボクの心が許すはずがない。海外から帰ってきた直後にもかかわらず、健吾を椅子に座らせて、ボクは滾々《こんこん》と説教を始めた。