そんなすったもんだがあったにもかかわらず、マユは何も変わらない。

 寝起きの不機嫌でほっぺたを膨らませていたマユだったが、隣のブシを見た途端、笑顔に変わった。
 
「おはよう、ブシコ」

 ブシは未だ名前を教えてくれない。仕方なくボクがブシと呼んだら女の子なんだからそれはないわとマユが反対した。

 その結果、マユが決めた呼び名が――ブシコ。つまりブシに女の子らしく"子"をつけただけ。何て安易なネーミングなんだろう。それだったらブシミでもブシエでもブシヨでも良かったではないか。

 そう提言したら、このすっばらしいセンスが分かっていないなんて情けないわと、マユは残念そうに、かつ仰々しく首を横に振った。